「酒井まゆ短編集 メリーバッドエンド」 酒井まゆ 

「酒井まゆ短編集 メリーバッドエンド」 酒井まゆ の感想です。

メリーバッドエンド (酒井まゆ短編集) (りぼんマスコットコミックス)メリーバッドエンド (酒井まゆ短編集) (りぼんマスコットコミックス)
(2014/01/15)
酒井 まゆ

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私が小学生でりぼんを読んでいた、正にりぼんっ子だった時代から活躍していますね。酒井まゆさん。
「ボクたちの旅」「ナインパズル」「永田町ストロベリィ」等の酒井作品、当時は読んでいましたねえ。
最近では「MOMO」も読みました。

この「メリーバッドエンド」に掲載されているのは全て短編。それぞれ10ページ程度の物語です。

メリーバッドエンドとは、受け手の解釈により幸福と不幸が入れ替わる結末のことを意味するそうです。
正にそんな感じの終わりを迎える物語も収録されています・・・読後の複雑なこの気持ち、メリーバッドエンドのせいだ。

以下それぞれの話の感想です。

・メリーバッドエンド
描き下ろしの短編。
まんまと、ミスリードにひっかかりました。上手く絵も台詞も、高岡兄弟の存在を隠しているのだもの。
双子の高岡兄弟の危うくて綺麗な世界は、茉莉だけが知る大切なもの。甘美な世界なのでしょう。
双子は仲良し~なイメージがありますが、この高岡兄弟の場合、その結びつきがかなり強いんだろうなあ。
きっとこの世界には誰にも入り込めない。茉莉はあくまでも、その世界を理解し、見守るものであって、その世界に自由に出入りできるという訳でもないのだろうと思います。

・サイゴの晩餐
自殺志願者の女子・松さんと男子・尾張君の物語。
まつにおわりと、洒落が面白いです。
「行きてりゃ良いことあるよーとか何も知らないのに言うのは無責任」という尾張君の意見。確かに。
各々何らかの理由があって選んだ自殺を、何も知らない他人が確信も無い未来を引き出して、止めようとするのは変な話だ。
スナック菓子の最後の晩餐。自殺の間際で、一緒に生きたいと思える仲間を見つけて死ぬのを辞めることも、本人が決めたことなのだからいいんじゃないかなあ。

・ぷり☆ぱり
彼女の美羽が付き合い始めた後に、アイドルになって、段々と変化を感じる主人公。
変わったのは主人公や同級生など周りの人間で、当の美羽本人は昔とちっとも変わらない。
友達でも、学校が分かれたり、就職するなどで環境が変わったりで、距離を感じることってあると思います。
「もう、変わっちゃって・・・私の知っているあの人じゃないんだろうな」と思いきや、久しぶりに会って前と全然変わっていないことを感じたこと、ありました。
そりゃあ、多少変わるところはありますが、中身までそうそう丸変わりはできないんじゃないかな。
美羽が感動した時、目がきらきらするのは全く変わっていませんでしたね。

・2番目じゃだめなんですか
タイトルは蓮舫の発言が元ネタですか?
出席番号も背の順も成績も全部1番の相川壱也と全部2番の伊吹仁奈の物語。
相川は女子に告白されても「2番目ならいい」と言って、いったい誰が相川の1番「本命の彼女」なのかは誰にもわからない。
仁奈だけが知る本命の彼女の正体・・・周りに努力していることを知られないための、嘘。
仁奈が眼鏡をかけていない相川を「クソメガネ」と呼んでいるのも伏線だったんですね。
相川は実は真面目で努力家で・・・表面上の良い部分だけではなくて、そういう見えないところも仁奈はしっかり見てたんだなあ。

・鳥籠教室
主人公の名前・・・羽瀬川小鳩。はがないの中二病妹と同性同名ですが性格は全く違いますよ。
鳥小屋掃除当番の小鳩と二宮。
小鳩がクラスメイトを鳥に置き換え妄想するのは笑っちゃいました。
昔、りぼんで連載していた亜月亮さんの「ラブわん!」という漫画があったんですが、主人公の力でクラスメイトを犬に変身させた場面があって、それを思い出しました。
人間と動物って、やっぱり似ている。あ、人間も動物の一部か。
見た目も雰囲気も真っ黒な二宮君はカラスイメージ。
小鳩は陰で「伝書バト」なんて言われるように、友達のパシリを嫌々ながらも引き受けている状態ですが・・・鳥小屋ではめちゃくちゃキレている。これが後々ピーちゃんによって役に立つとは想像つきませんでしたよ。
二宮君は、おそらく不治の病なんでしょう。二宮君がピーちゃん経由で小鳩に残した遺言は、小鳩を勇気づけてくれたけれども、切ない。

・惑星ハニー
惑星ハニーと書いてプラネットハニーと読みます。
キサラはいわゆる電波さん。主人公・三浦の心を読みまくり、変な語尾で「何なんだこの子は!」と思っていました。
一番近い宇宙は人間の心。どうやったって何を考えているのかその全貌はつかめない。考えるのなんて追いつかない位いろんな気持ちで世界は動いている・・・哲学ですな。
三浦と麗さんのメール・・・めっちゃ他人に知られたくない内容だわ、これは。
キサラちゃん、良い子じゃないか。最後の頭撫でる所で触角が当たっている場面でじわじわ笑いがこみ上げました。

・ブラインドール
人が死んだ時だけ風が吹く街。和洋中混じった世界観です。この異世界感が、良い。
目が不自由な美人令嬢・人魚。彼女に求婚する男達はたくさんいる。「私が聴いたこともない素敵なものを聴かせてくれた方と結婚する」・・・竹取物語みたいな展開です。
彼女のために奮闘する金持ちの男達は、滑稽ですね。人魚が惹かれているのは、彼らが馬鹿にする廃れた家業を継いだ謎の男・金魚。
匂いと靴の音で、金魚が自分をいつも見つめていたことを知っていた人魚。
金魚さんの家業は、風鈴職人か。なるほど、風鈴は風が吹かないと音が鳴りませんから、廃れてしまったのでしょう。
金魚さんが人魚のために用意した「聴いたこともない素敵なもの」が鳴る瞬間の絵がとても綺麗。
たくさんの風鈴と人魚の髪が風にたなびき、一瞬時が止まった様にも感じられる。
風鈴のために吹いた風は、金魚さんが死んだから吹いたのか?そうだとしたら、正にこの短編はメリーバッドエンド。

・FLAG
ホラーな雰囲気の短編。
確かに、読み返すと、唯行は久志以外と会話していないんですよ。
唯行が死者だったのがどんでん返し1。最初は夏紀が実は死んでいるんじゃないかな、と予想していました。
どんでん返し2は夏紀の久志への復讐。
最後はやっぱり、バッドエンド。久志のジンクスは見事でした。ジンクスで最悪の状況になるフラグを回避する・・・の意味合いで、タイトルはFLAG(フラグ)ということなんでしょうか。
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Comment

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鳥籠教室の二宮くんの不治の病って何なんですか?
とても気になります。
教えてください
2016.06.05 Sun 22:58
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Name - 紅ネ  

Title - コメント返信

コメントありがとうございます。

鳥籠教室の二宮君の病気は何?とのことですが、作中では特に病名は書かれていません。体のどの部分が悪いとかも明記されていません。

二宮君から詳しい説明があった訳でもないです。小鳩が独自にネットで二宮君の病気について調べて、彼の命が長くはないことを知ってしまう・・・という場面は描かれています。

2016.06.06 Mon 20:25
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返信ありがとうございますっ!!
長く生きられないんですね……
悲しいです(T_T)
2016.06.08 Wed 23:57
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