「アンの世界地図 It’s a small world」1巻 吟鳥子 

「アンの世界地図 It’s a small world」1巻 吟鳥子 の感想です。
最近読んだ中でも特にお気に入りの漫画でございます。

アンの世界地図 1―It’s a small world (ボニータコミックス)アンの世界地図 1―It’s a small world (ボニータコミックス)
(2014/02/14)
吟 鳥子

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〈あらすじ〉
主人公は竹宮杏(アン)、16歳。ロリータ服が大好きな女の子。アンは東京で母と一緒に暮らすも、ネグレクトや暴力を受けている。大切なドレスを母に破かれたことをきっかけについに家出をしてしまったアンは裁縫上手な祖母が住む徳島に向かったのだった。
しかしながら、祖母の居場所がわからず結局路頭に迷ってしまう。そんなアンを救ってくれたのは、古民家に住む着物少女・アキ。居場所の無いアンはアキと一緒に古民家で暮らすこととなり、アンの冒険が始まる・・・!

〈登場人物〉
・アン
本名は竹宮杏(たけみやあん)。16歳のロリータ服をこよなく愛する女の子。憧れはロココ時代のフランス、マリーアントワネット。酒浸りでネグレクト気味の母、遠方へ働きに行っていて家にいない父を両親に持つ。バイト代をためて買ったドレスを母に破かれたことをきっかけに、裁縫上手な祖母のいる徳島へ家出するがあえなく失敗。
道中助けてくれたアキと一緒に古民家で暮らすこととなる。
豪華なドレスと金髪の巻き毛、碧いカラコンの瞳でアキに外国人だと間違われたが、純日本人。

・アキ
築200年の古民家で一人暮らしをする、着物を着た少女。巫女のバイトや裁縫の仕事でお金を稼いでいるが、貧乏なため倹約家。明太子が好き。
家事と裁縫が得意で、アンのドレスをつくることもある。包容力があり、アン曰く「本当のおかあさん」。
ドイツ人の血を引くことや、一人ぼっちで古民家に住むようになったいきさつ等謎の多い人物でもある。

・マサじい
アキのご近所さんで、旧知の仲。
最初は家出してきたアンに口出してきたが、アンがアキと共に暮らすことを認めてくれた。
麻雀等ボードゲーム好き。

・マサキ
通称・マサ兄。マサじいの孫である。アキとは旧知の仲。
生まれた時から目つきが悪く、顔は怖いが根は優しい。
マサじいに雀鬼になるよう育てられ、麻雀が強い。
アキの秘密を知っている。

・キヨヒコ
通称・キヨ兄。アキがバイトしている神社の息子。
渋谷の大学に通っていた経験がある。神職だが結構おちゃらけた性格。
アキの秘密を知っている。

・家
アキの住む、築200年の古民家。
自称・うだつの家、民宿うだつ。物語はこの家の語りから始まり、作中では時に語り部となる。
一人ぼっちのアキに寄り添ってくれる人をずっと待っていて、アンが一緒に住むのも喜んでいた。
人が遊びに来ると嬉しいみたいです。

〈各話感想〉
・第1話
アキが古民家で一人泣く場面から物語は始まります。アキに何があったのかは1巻では語られておりません。その内この場面の謎も明かされていくことでしょう。
アンの東京での暮らしは、見ただけでも大変だと感じさせられます。
アン曰く「お役立たず」の両親。家はゴミ屋敷。小さい頃からネグレクトと暴力を受ける。
ご飯は毎日値引きのコンビニ弁当。コンビニの店員には強烈なお客と噂され、「値引きのロリータ」「ビンボー姫」何て言われています。
ロリータ服を着て貴族として満喫する時間と、生活費とロリータ服のための資金をバイトで稼ぐドレイの時間を彼女は日々体験しているそう。結構ロリータの服ってお高いですよね。
アンのバイト代3か月分のドレスが母親に破かれたことで、彼女は家出を決意しました。ひどい家。もはやこの家族は家族としての役割を持っているのでしょうか。
ヒッチハイク前に携帯電話を海に投げ捨てるのは映画「プラダを着た悪魔」の終盤で、主人公のアンディが噴水に携帯を捨てた場面を思い出します。
携帯電話=日常、現実、今までの生活のイメージで、それと決別して、新しい人生が始まるんだ!という印象を受けます。
四国のお接待の文化・・・お遍路さんへの昔ながらの文化が今も残っているんですか。何だか心が温かくなります。
お茶を頂いた直後、アンは「なぜ世の中はたまにすごく優しい人に出会うのでしょう」と涙します。
本当!そういう風に思う時あります。あなたは神様か、仏様か、天使様か・・・と思ってしまう。「世の中に絶望した!」と思っている時に、そういう方に出会うと、本当に涙が出てきます。

夜なべして破れたアンの靴下を繕うアキに対して、「ドレイとして働く気持ちはわかる。もうやめて下さい」と言うアン。その言葉へのアキの返答は「しいて言うならドレイでなくおかあさん」。
母さんが夜なべして手袋編んでくれた・・・こんな歌がありますが、おそらくアンは母にそんなことをしてもらっていなかっただろうと思います。
ドレイと違って、おかあさんは子のために、無償の愛が原動力となって手袋を編んでくれるものだと解釈します。アキもきっとアンのために靴下を繕ってくれる。
この場面は、アンが初めておかあさんの愛情を受けたところなのかもしれない。

・第2話
アンが神社でお願いをする場面では胸に詰まるものがありました。
「竹宮杏です 居場所はありません お願いです わたしはしあわせになりたいです 毎朝しあわせな気持ちで起きてみたいです」
毎朝、気持ちよく起きることのできる毎日は何と幸せなことなんでしょう。
安心して眠ることのできる場所があり、気持ちの面でも良好でなければそれは実現しないと思います。
何か不安があれば不眠になったり、起きても悲しい気持ちがあったりするはず。
それが当たり前になってしまいそうな日常の小さな幸せを見出してくれる、アンの一言でした。

居場所の無いアンをアキは家に迎い入れ、民宿屋アキの開業。うだつの家さんが民宿うだつになったと自分で言っていて面白いです。

・第3話
寝て、起きて、ゆっくり過ごして・・・アンの気分はハワイでのバカンスでしょうか。
アキの裁縫技術には驚かされました。仕事でやっていたから上手なのかもしれませんが、短時間で下着を縫い上げてしまうのは凄いです。
ドレス用の下着に浴衣を羽織って、阿波踊りのうちわを持ち、ジャポニズム風スタイル。
縁側で浴衣でくつろぐアキも、そこはかとない色気があって負けておりません。
そして・・・最後の最後でマサじいの登場。

・第4話
家出少女のアンに怒るマサじい。
アンの「声の大きい男性って女子供の話を聞かない」という持論は、経験から出たものなのかな?
父親絡みで何かあった?
世の中まともな親ばかりでない・・・まともな親に育てられたであろうマサじいとそうでないアンの価値観は合いそうもありません。親は子を選べないように、子は親を選べない。人生って結構運に寄ること多いです。
「ちゃんとしてくれるひとが親だって言うなら アキがわたしのはじめてのおかあさんです わたしを本物のおかあさんから引き離さないでください」
アンの切実な願いはマサじいに届きました。

・第5話
ボードゲーム好きなマサじいによるボードゲームの説明から始まり、「一体何の漫画が始まったんだ!?」と思った方は私だけではないはず。
マサじいによる孫・マサキへの麻雀を使った更正の話は強烈。結局マサキは一時期ヤンキーになったけれども相変わらずマサじいと麻雀打っていて、麻雀が上手いことコミュニケーションツールになっていると思いました。
初めてマサキが他人のために闘った麻雀・・・捨てられた子猫を助けるための麻雀シーンは熱い、熱すぎるぞ!
アンの「同じことをしてもほめられる日もあれば叩かれる日もあって、ルールがよくわからない家だった」という発言は、さらっと登場しましたが家庭環境の悪さを感じさせられますね。アンはそういう家でよくまっすぐ育ったものです。

・第6話
第5話の最後に引き続き、マサじいの孫・マサキが登場。
男が苦手なアンは怖がって隠れてしまいます。
アンは小さい頃から男子に嫌がらせをされ、中学生の頃ブスと言われたことが相当傷付いたみたいです。
あーよくあるある。からかっているんですよね。
マサ兄曰く「アホまっさかりの男子が女子に言うブスは可愛いねって意味」らしいです。
アキ特製の「たらいうどん」は徳島独特のうどんの食べ方だそうです。
これですね。
http://udon.mu/taraiudon

マサ兄が持ってきた梨園のバイトをするかしないかをかけて、マサキとアンは麻雀で勝負することに。
今まで麻雀をやったことが無いのですが、ここで詳しく簡潔にルールが説明してあって、何だかやりたくなってしまいました。
結局は雀鬼のマサ兄の勝ち。アンは梨園でバイトすることになったのでした・・・。
バイト朝4時起きで集合ですか。農家の朝は早い。

・第7話
バイトの日の朝。バイトを嫌がるアン。
アンにとってはドレスが自分を強くしてくれる戦闘服で、バイトはもんぺを着ないといけないから強くなれないというのが原因。ロリータの服が自分を強くしてくれる・・・下妻物語の桃子に似ていますね。
でも、ファッションや化粧は自分に自信を与えたり、強くしてくれる効果がありますよね。気持ちを切り替えてくれます。
そんなアンにアキがプレゼントしてくれたのはボンネットとモスリン生地のエプロンドレス。
これでアンも強くなってバイトに繰り出します。
「ごきげんよう」と丁寧に挨拶する姿は貴族のお嬢様です。梨園が薔薇園に変わったみたい。
美代おばあちゃんが言っていますが農作業のおばちゃんが被る広いつばの帽子ってボンネットに似ていますよね・・・薄々思っていました。
そしてキヨ兄こと神社の息子・キヨヒコが登場。何だかチャラいですね。
最後の辺りでキヨ兄がアンに言った「アキみたいな人間は怖い」という発言の意味は一体何なのか・・・
マサ兄、キヨ兄はアキの秘密を知っている風ですが、どんな秘密なのか気になりますね。

〈その他感想等〉
ひどい家庭で育ったアンが家出をして、行き着いた徳島の地でのびのびと、時には落ち込んだりもしながら生きる姿が印象的な漫画です。
アキだったり、マサじいだったり、マサ兄だったり、アンが出会う人がまた良い人ばかり。おそらくこれまで不幸な目にばかり合っていたアンには、もうちょっと幸せと言うものを味わってほしい。
「毎日しあわせな気持ちで起きたい」「アキが私のはじめてのおかあさん」といったアンの言葉は心に響くものがあります。特に第4話の「ちゃんとしてくれるひとが親だって言うなら アキがわたしのはじめてのおかあさんです わたしを本物のおかあさんから引き離さないでください」という台詞が心に残ります。
優しい家族に囲まれ、育って生きることがどれ程幸せか。
優しい父母がいる家族の姿、仲が良いご近所同士の姿が現代においては崩れ始めているので、この「アンの世界地図」という漫画は思った以上に現代の問題を取り上げているんですね。
これまで一人でロリータ服を着て闘い続けてきたアンが、アキ達と出会い、優しさに触れ、どの様に変化していくのかということにも注目して読んでいきたいところです。

あと、この漫画を読むと日常の小さな幸せと言うものに気付かせてくれる気がします。
美味しいご飯を食べたり、アキとアンが一緒に針仕事をしたり、麻雀で盛り上がったり・・・そういう幸せに気付くことで人生がちょっと楽しくなりそうです。

あと、ちらほら出て来るアキの秘密は一体何なのでしょう・・・実は男なのだと思いますが。それ以外にもドイツ人の血を引いていたり、両親や家族の姿が見えなかったりと色々謎があるので、アキという人物自体にも興味津々です。

最後に・・・舞台が徳島なおかげで、徳島に行きたくなってしまいます。そうだ、徳島に行こう。
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