「中卒労働者から始める高校生活」1巻、2巻 佐々木ミノル 

「中卒労働者から始める高校生活」1巻、2巻 佐々木ミノル の感想です。
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〈あらすじ〉
18歳の片桐真実は父が服役中、母が他界ということで中学卒業後は高校に行かず就職したいわゆる中卒の身。中卒であることに劣等感を抱いていた真実は、高校受験を失敗した妹・真彩とともに人種のルツボである通信制高校に通い始める。
同級生は20歳のシングルマザーに70代のおじいさん等々。その中でも一際目立っているのが通信制高校とは無縁に思えるお嬢様育ちの逢澤莉央であった。真実は住む世界が違うと思いながら、次第に莉央に興味を持って行く・・・。

〈登場人物〉
・片桐真実(かたぎりまこと)
 18歳。中学卒業後工場に就職し、妹の真彩を育ててきた。職場に大学卒の新入社員・梶原が入ってきたことをきっかけに、通信制高校に入学。中卒であることにかなりの劣等感を抱いており、お嬢様育ちの莉央と喧嘩することもある。口は乱暴だが、正義感は強い。

・逢澤莉央(おうさわりお)
 お嬢様育ちの美少女。とある事情で通信制高校に入学。一見きつい性格に思われがちだが、繊細な心の持ち主。以前は明るい性格であったが家庭教師であるいとこのタクヤから性的暴力を受けて以降、心を閉ざすようになった。真実に惹かれ始めている。

・片桐真彩(かたぎりまあや)
 真実の妹。高校受験を失敗した結果通信制高校に入学。お馬鹿だが、明るくて元気な性格。真実のことが大好きなブラコン。

・斉藤若葉(さいとうわかば)
 20歳。17歳の頃から働いている未婚のシングルマザー。一人娘のひなぎくとよく一緒に登校している。しっかり者であるが、一人で辛さを抱えてしまいがちな性格。似た境遇の真実に惹かれている。

・一条新(いちじょうあらた)
 母親が莉央の家の家政婦として住み込みで働いており、自身も莉央の家で暮らしている。学歴もなく、金もない父を反面教師に勉強をし続けてトップクラスレベルの高校に行く予定だったが、莉央を守りたいという一心で共に通信制高校に入学。真実に対抗心を燃やす。

・松井(まつい)
 76歳のおじいさん。真実達の同級生。

・五十嵐(いがらし)
 真実達の同級生。チャラい。女子にばかりちょっかいを出している。学校なんてだりいしさっさと辞めたいらしいが、とりあえず通い続けている。真彩のことをロリ巨乳ちゃんと呼び、やはりちょっかいを出すが当の本人には唾を吐かれるほど嫌われている。

〈感想〉
 真実と莉央がお互いに惹かれたり、真実と若葉が良い感じになったりとラブコメ要素もある漫画ですが、通信制高校が舞台と言う所が何とも新鮮です。
 作者の佐々木ミノルさんは実際に通信制高校に通っていたらしく、当時の経験がこの漫画にも活かされているそうです。
 そのためか、通信制高校に通学していた人でしか知らない様な知識(スクーリングの際クラス分けがないから名札を付ける、地区ごとの生徒が公民館に集まって勉強する支部会の存在等々・・・)が登場して、より内容に現実味が増します。ただし佐々木ミノルさんが通っていたのは20年前と言うことで、もしかしたら現在の通信制高校とは仕組みが違うかもしれないらしいですよ。
 今や日本は学歴社会。大卒、院卒でも就職が大変。大学全入時代うんぬんなんて言いますが、真実の様な中卒で働いている方ももちろん存在します。
 若い頃からしっかり働いていて、本当に偉いと思います。単に高校行きたくなかった人もいるかもしれませんが、中には真実や若葉の様に家庭の事情で高校入学・卒業を諦めた方もいるのでしょうね。
 真実はきっかけこそ大卒新入社員・梶原の登場で通信制高校に入学しましたが、それ以前から中卒であることに劣等感を抱いておりました。どんなに働いて仕事が上手くなっても、中卒というくくりで自分を見られているように感じてしまう真実。
 真実の親代わりである社長が、真実のことを「テメェがテメェを笑ってるからなんでも悪く聞こえるんだよ」と、真実の心の内を指摘したようなことを言っていますが、結構それは劣等感を持っている人の多くに言えることではないのかと思ってしまいました。(私含め・・・)
 
 真実の場合は中卒。学歴コンプレックスだったり、顔面コンプレックスだったり、職業コンプレックスだったり・・・人それぞれ持っているコンプレックスや負い目は違うもの。他人と自分を比べることで劣等感は生まれやすいですが、他人に何かを言われる以前に自分自身がまず自らを馬鹿にしていることで、さらに劣等感は強まってしまうのかもしれません。
 何かコンプレックスを持っていると自分が嫌いになってしまうのはわかります。嫌いになって自分を貶めていくことで、周囲の言葉も余計に自分を馬鹿にしているように聞こえてきて、不の悪循環が生まれてしまうんですよ・・・。
 自分のふがいなさだったり、ダメさ加減、劣等感やコンプレックスも含めてこれが自分なんだと認めてしまうことができると心も楽になることができるのではないだろうかとつくづく思う時があります。まさにありのままでと言った感じで。(byアナと雪の女王)
 真実が抱えている悩みも深刻ですが、莉央や若葉も同じ位大きな悩みを抱えています。
 新自身も莉央は別の世界の人間だと思って、複雑な気持ちを抱いていますし、もしかしたら一見能天気そうな真彩にだってなかなか人には言えない悩みを抱えているのかもしれません。
 漫画の中で印象的なのが、自分の弱い部分をさらけ出す感情の爆発。
 真実の場合は自分の中卒であることの劣等感、シングルマザーの若葉の場合は何でも自分だけでやろうとして人に頼れない自分自身、莉央の場合は押し込めた自分の苦しみ、新の場合は莉央に何もできない無力感。
 真実がタクヤから莉央を助けた直後のシーンは、その爆発が特に強いです。

「この程度で自分を可哀想がっておかしいか!?」
「仕事があるだけ有難いと思えってのか 家があるだけ恵まれてるって!? 散っ々言われて来てんだよ「もっと不幸な人間いっぱいいるんだから」って!!」
「知らねぇよ!!! これは俺の苦しみだ 俺の持ち物だ! 持ってねぇ奴がごちゃごちゃうるせぇよ!!」
「なんで俺ばっかり・・・ 俺だってふつうがよかった・・・!!!」


莉央に今までため込んでいた気持ちを一気に吐き出して、莉央も真実自身も泣きじゃくるシーンでの真実の言葉です。
実はこのシーンの手前に、真実の勤める職場の社長が
「お前 自分を可哀想がるのをやめろ 自分を卑下するのをやめろ 「俺を決めつけやがって」と世を恨んでるんだろうがな テメェだよ 自分(テメェ)が自分(テメェ)を決めつけてんだ」
と真実に言うシーンがありまして、その言葉に対して真実は自分を可哀想がっておかしいのかと言っているんですね。

「テメェがテメェを笑ってるからなんでも悪く聞こえるんだよ」の発言も、このシーンでの発言も、社長は確かに一理あることを言っているとは思うのですが、「はい、そうですね」と認めることが私自身真実同様できなかったです。

 これは私の話ですが、高校生の時陰口言われて物凄く悩んだ時期があったんです。学校行くのも嫌で、ある時母親に相談したのですがその時「もっと不幸な人はたくさんいるんだよ。アフリカの貧しい子供達とか学校に行けなかったり、病気の人だって世の中にはいるでしょ」と言われたんですね。
 その時私が思ったのは、「確かに自分より辛い立場にいる人は世の中にたくさんいるかもしれないけれど、どんな辛いこともそれを抱えている本人にとっては一番の苦しみでしかないよ」ということ。辛さとか、苦しみとか一見どっちの方がひどい状況なのか推し量れそうでもありますが、苦しみを抱えている本人にとっては他とは比べ物にならない位の大きな悩みなんですよ。
 他者の苦しみを知って、自分の苦しみは何てちっぽけなんだと感じることはできると思います。それで割り切れる人だっていると思いますが、そうでない人間だっているはずです。私も、真実自身も割り切れていない側の人間でしょう。

 社長の「自分(テメェ)が自分(テメェ)を決めつけてんだ」という言葉は2巻の一番最後、悩みを話せる人、わかってくれる人、一緒に泣いてくれる人なんている訳ないと思っていた真実が莉央に悩みを打ち明けて莉央も一緒に泣きじゃくる場面で再登場します。
 誰も自分の悩みをわかってくれる人なんていないと思っていたのは、真実自身がそう決めつけていただけで実は近くにいた。それが自分と全く育ってきた環境も違う莉央でした。
 内容は違えど、悩みを抱え続けている2人だからこそ共鳴したのではないでしょうか。
 
 個人的に、あまりにも人間性違い過ぎる人に悩みを打ち明けても「えーそんな悩みあったの?そんな風に見えないよー」っと言われてしまうことあるんですよね・・・これは自分の経験によるものですが・・・。やっぱり性格とか境遇とか抱えているもので共通項がある人、あるいは共通項少なくても悩みを受容してくれる姿勢がある人(天使か聖人か、仏様か神様かと言わんばかりの人)の方が、悩みは言いやすいですね。

 自分の感情も交えながら徒然と書いた感想になりました。
 2巻の最後に書かれている3巻の予告によると、どうやら真実と莉央は付き合うことになる様です。3巻からはラブコメ要素がより強くなるのかもしれません。

〈その他感想等々〉
・お馬鹿な真彩の元気な感じが良い!明るい気持ちで生きるって大切だよなーと思わせてくれます。
・若葉さんは真実達よりちょっと年上で姉御肌って感じです。ひなぎくがいなくなってしまった一件で、一人でできないこともあって、他人に頼っても良いんだ・・・と実感して真実達に弱さを見せますが、彼女まだ20歳なんですよね・・・私より年下だよおい。同い年の子は大学だったり専門学校行ったりしているのに、若葉さんは子育てに仕事に学校と偉すぎる。若葉さんの話題でもう一記事書けそう。
・真実と若葉さんは付き合うかと思いきや、やっぱり莉央とくっつくのかー。若葉さんが真実のことを諦めきれるのかも気になるところです。
・チャラ男五十嵐が言っているように、通信制高校はどんどん脱落者が出てくるそうです。とりあえず主要メンバー(真実、莉央、真彩、若葉、新、松井さん、五十嵐)達は無事に高校卒業してもらいたいですね。
・おじいちゃん学生の松井さんやチャラ男五十嵐にスポットライトを当てた話も読んでみたいですね。松井さんの場合は戦争とかで学校通えなかった過去等がありそうだと予想。

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