「魔女に与える鉄鎚」1巻 村田真哉 檜山大輔 

「魔女に与える鉄鎚」1巻 の感想です。

魔女に与える鉄鎚(1) (ガンガンコミックスJOKER)魔女に与える鉄鎚(1) (ガンガンコミックスJOKER)
(2014/08/22)
村田真哉

商品詳細を見る


〈あらすじ〉
「魔女狩り」と称して罪の無い少女が拷問されることが当たり前に行われている世界が舞台。魔女狩りを正当化した書物、「魔女に与える鉄鎚」の正体は悪魔アスモデウスによる魔女の造り方の指南書であった。拷問を受けた少女は魔女となり、恨みに任せて人を殺すものもいる。魔女狩りは人間同士を呪い合わせ殺し合わせる悪魔の謀略であったのだ。暴走した魔女を止める為にキシリア教会から派遣される「異端審問魔女(インクウィッチ)」・炎の魔女ドミノの過酷な戦いが始まる・・・。

〈主な登場人物〉
・ドミノ・アチュカルロ
「炎」の魔女(ヴェネフィカ・イグニス)であり、キシリア教会より魔女を生み出さないことを目的に各地へ派遣される「異端審問魔女(インクウィッチ)」。炎にまつわるありとあらゆる拷問を受け、火刑に処され死んだ「炎」を使役する魔女。わざと異端審問魔女の派遣を遅らせ、魔女を生み出してから殺そうとしているキシリア教会に疑念を持っている。布教でも奉仕でもない、どんな愚行も正当化しいとも容易く人間を堕落させる悪魔の生んだ概念「宗教」をぶっ壊すことが目的。

・セレナ・セルバンテス
神聖ロマネ法王。神聖国家スパニア聖都ロマネ内ヴァルチカ市国初の女王陛下である19歳の女性。先王の実の子ではなく、戦地視察で拾われた遺児だった。魔女に聖職者の任を与え教会の監視下に置くという、異端審問魔女の仕組みを造り出した張本人。魔女にしてから殺すことを続ける教会の腐敗に気付いており、魔女狩りの現地に赴きその本質に迫るという目的でドミノ達に同行する。

・アイダ・センティーノ
「鞭」の魔女(ヴェネフィカ・フラグイム)である異端審問魔女。ドミノの仲間。八重歯と関西弁口調が特徴。

・パズ・フィゲロア
「粉砕」の魔女(ヴェネフィカ・ワスタレ)である異端審問魔女。ドミノの仲間。間延びした喋り方が特徴的な眼鏡っ娘。元は名門貴族フィゲロア家の娘。家が没落し一族郎党魔女として駆り立てられ処刑され、パズ自身も頭蓋骨粉砕器により拷問を受けた。頭蓋骨粉砕器を具現化する魔女としての能力を持つ。

・ナジャ・アリエスビエタ
「偶像の魔女」(ヴェネフィカ・ウィルゴ)。辺境都市グーデリア領内「異形の谷」の魔女。異形の谷を訪れるセレナへの使者。「鋼鉄の処女」(アイアンメイデン)を具現化する魔法を操る。星が描かれた瞳が特徴的。

・フィオナ・コルティス
「絞殺の魔女」(ヴェネフィカ・フルカ)。辺境都市グーデリア領内「異形の谷」の魔女。異形の谷では魔女では無くキシリア教徒が裁かれ、キシリア教徒達の処刑人を務める。教会を目の敵にしている魔女。

・謎の魔女
異形の谷を訪れるドミノ達を追う謎の魔女。車輪を使った魔法を使う。名前等未登場。

〈感想〉
魔女狩りに拷問。作中にも様々な拷問方法が説明とともに登場します。鋼鉄の処女、火炙りといったメジャーなものから頭蓋骨粉砕器と言ったそうでないものまで。
これらはもちろん実在するもので、事実魔女狩り・魔女裁判はかつて世界中で行われておりました。わざわざ苦痛を長く感じさせるような拷問具が開発されてもおり、人間の残虐な一面はとても恐ろしいものだと感じさせられます。

この物語はあくまでもフィクション。現実で言うキリスト教的な存在が作中ではキシリア教として登場し、法王も存在します。
そして・・・タイトルにもなっている「魔女に与える鉄鎚」。
作中の設定では悪魔アスモデウスにより著された魔女狩りを正当化した書物ということとなっていますが、実際の「魔女に与える鉄槌(鉄鎚)」は1468年ドミニコ会士で異端審問官であったハインリヒ・クラーマーによって書かれた魔女に関する論文です。

※wikipediaでは魔女に与える鉄槌表記になっております。鉄鎚ではなく鉄槌。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%94%E5%A5%B3%E3%81%AB%E4%B8%8E%E3%81%88%E3%82%8B%E9%89%84%E6%A7%8C

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%94%E5%A5%B3%E7%8B%A9%E3%82%8A

そういえば、あのジャンヌ・ダルクも魔女として火炙りの刑にされましたね。神風怪盗ジャンヌでまろんが火炙りにされるジャンヌを助けようとするシーンもありました。

この「魔女に与える鉄鎚」に登場する魔女は、
拷問を受けた末に死んでいった女性達で、一度死んで魔女として復活すると、自分の受けた拷問具を生成し使役させる魔法を持つとのことです。恨みに任せて暴走し、人を傷つける魔女もいれば、ドミノ達の様に教会の下で暴走した魔女を止める者もいて、異形の谷のナジャ達の様に教会には所属しない魔女達も存在するようですね。魔女と一口に言えど色々なタイプがいて、時には魔女同士対立するといったこともありえそう。

単純に考えて・・・

生前に、よりひどい拷問を受けた者ほど強い能力を持つ魔女になるんじゃないか!?

と思いました。

実際第1話で登場した「破壊」の魔女(ヴェネフィカ・エスタリド)のエリシアは自分の受けた拷問「苦悩の梨」による魔法を使っていましたが、その直後ドミノは熱した苦悩の梨に、火刑の炎をエリシアにぶつけるといった魔法を使役しているので、推測ですがエリシアよりむごい拷問を受けたドミノの方が様々な魔法を使える上に与える苦痛も強いということになるのではないでしょうか。まあ・・・魔法の能力が上でも経験とか使い方の上手さで強さは逆転可能だとは思いますが。

異端審問魔女であるドミノが主人公の物語と言うことですが、彼女の目的は「この世界から宗教を無くすこと」そしてそのために宗教を生み出した張本人である魔王アスモデウスを倒そうとしている訳です。
第1話の冒頭を見た感じでは、生前のドミノは敬虔な宗教の信者だった様。

「あんなに祈ったのに あんなにおすがりしたのに 毎日試練に耐えたのに ああ 主よ あなたは何故 私をお救いにならないのでしょう」

火刑に処されるドミノの心の声。宗教を信じて毎日暮らしてきたのに、その宗教によって魔女として殺されてしまうのですから・・・信じたものに裏切られたことこそ拷問と等しい位に辛さを与えたのではないでしょうか。
それと同時に宗教への疑念も湧き、恨みも湧き、バックには悪魔の存在もちらつき、そりゃあ、宗教を無くしたくなりますよ。

異形の谷においては宗教への信仰を持つことが悪とされ処刑されてしまいますが、その処刑現場にて法王セレナ様が
「信仰とは 神に対する依存である 神に従う者 神に反目する者 この二者は違うもののようでいて 正邪の判断を神に委ねているのは同じ 斉しく依存」
と処刑人フィオナに対して発言。
神を信じる、信じないは人によって違うと思いますが、それってどちらも神の存在が基準になっていて振り回されている二しかすぎず、信じなくても神と言う存在に縛られているんですねえ・・・

神様とか宗教とか、信仰とか、生活に根付いてしまっていますが、その根拠は結構あやふやな気がします。そもそも神と言う存在がいるのかどうかも定かではなく、教えと言うのもいったいどこから発生して誰が決めたのか、それは果たして正しいのかということも考えたらきりがない位疑問点がいっぱいあると思うのです。
あんまり言うと宗教叩きみたいになってしまいますが、宗教って不思議な存在ですよ。本当に。

ドミノ達魔女達の戦い、そして拷問に見られる様な人間の残忍性を描いたとともに、「宗教、信仰、神とは何だ?」ということを物語を通して考えさせられます。

最近は魔女に関する漫画やアニメ作品が割と豊富で魔女が普通に生活して日常に溶け込んでいる話もありますが、現実の魔女は罪も無いのに魔女狩りに合って殺されて、迫害されてといった歴史があるんですよね。今でこそ魔女はフィクションの中でよく取り扱われる存在ですが、ちょっと昔までは悪者だったのです。
明るい系の魔女の話にたくさん触れているとそのことを忘れそうになるのですが、魔女の歴史にはそういう暗くて残忍な出来事があったんだということを改めてこの「魔女に与える鉄鎚」を読んで思い起こされました。一応ファンタジーですが、この漫画の中での魔女の設定や扱われ方は、現実の魔女の歴史により寄り添ったものの様に感じますね。

〈その他感想、疑問等〉
・拷問が登場する訳ですから、結構エグい、グロい場面も登場します。苦手な人は要注意。
・ドミノ達魔女は見た目は可愛らしい感じですが、その過去とか使役する魔法とかが恐ろしい。それだけひどいことを行われたという証ですね・・・。
・知らない拷問が結構登場しました。読み進めて行けば拷問に関する知識が増えるだろうと思います。
・第1巻を読んだ時点では、一番きつい拷問を受けたのはドミノなんじゃないかと思う・・・性的な苦痛、熱した苦悩の梨に火炙り、残虐過ぎ。
・元優等生パズは怒ると怖そう・・・というか頭蓋骨粉砕器で応戦した時は怖そう飛び越え怖かった。
・セレナ様の元ネタはセーラームーンに登場する王女「プリンセス・セレニティ」もしくは「ネオ・クイーン・セレニティ」でしょうか。名前に髪型、額の月のマークが似ているので可能性は高いかな??
・第1巻の最後にて魔王アスモデウス登場。でかい、そして意外に登場が早かった。ちなみに、アスモデウスという悪魔は実際にユダヤ教やキリスト教に登場します。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%A2%E3%83%87%E3%82%A6%E3%82%B9
・車輪を使う謎の魔女、異形の谷の魔女フィオナは露出度高めな格好過ぎて、どうしてその衣装選んだの!?とつっこみたくなる。まあ、個人の好みですから・・・
・法王でありながら現在の教会の腐敗を批判するセレナ様。彼女がどういう意図で動いているのか、ドミノ達の敵なのか味方なのかはっきりしないので気になります。
・巻末の作者さん(村田さんの方です)のおまけ漫画に描かれていた宗教の勧誘話が面白かった。

魔女に与える鉄鎚の第1話は公式ホームページで試し読みできます。お試しあれ!
http://www.jp.square-enix.com/magazine/joker/series/majyotetsui/
関連記事
スポンサーサイト

Comment

Add your comment