「死役所」1巻、2巻 あずみきし 

「死役所」1巻、2巻 あずみきし の感想です。
先日テレビ番組5時に夢中の中瀬ゆかり番付にて中瀬さんによって紹介されていた漫画。気になり早速読みました。

最初はその名前から市役所の死にまつわる話(孤独死とか生活保護受けていた人が死んじゃったとか子供の虐待死とか)そういうものを集めたものかと思いきや全く違いました。死んだ人が行くあの世のお役所のお話です。
どす黒い話もあれば、そうでない話もあり。どちらかというとブラックな雰囲気だとは思う。

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〈あらすじ〉
此岸と彼岸の間に存在する死役所(シ役所)。そこを訪れるのは自殺に他殺、事故死、死刑囚あらゆる死んだ人間のみ。死を迎えた者達が手続きをする場所であった・・・。

〈主な登場人物〉
・シ村
死役所(シ役所)の総合案内である男性。メガネにスーツ、Vの字の様な怪しい笑顔が特徴的だが時に表情を大きく変えることがある。本作のメインキャラクター。いわゆるお役所仕事な印象を受ける。「お客様は仏様です」が口癖。飄々としており、ブラックな発言もあり。死役所の職員は全員死刑になった者であり、シ村自身も元死刑囚である。

・ニシ川
死役所自殺課の職員。若い女性。口元のほくろが特徴。仕事に関しては真面目らしいが口が悪い。はっきりとした物言いをする性格でシ村に対しても容赦ない。

・岩シ水
死役所人為災害死課の職員。地味目な男性。気が弱め。

・イシ間(石間徳治)
死役所他殺課の職員。人情味溢れる強面の中年の男性。姪であるミチを襲った少年達を殺害したことで死刑となった過去がある。

・ハヤシ
死役所生活事故死課の職員。若い男性で死人が持って来た漫画をコレクションしている。

・松シゲ
死役所交通事故死課の職員。滑舌が悪い中年の男性。

〈各話あらすじ・感想〉
大体1話完結、もしくは2話完結のお話です。
各話をちょっとだけご紹介。ちょっとと言っても実際書いてみたら長いものなので、読むのが面倒な方は下の〈まとめの感想〉に飛んでも大丈夫です。

1巻
・第1条(第1話)「自殺ですね?」
死者:鹿野太一 12歳の中学1年生の少年 いじめを苦にマンションから飛び降り自殺
最後のページに登場する生前の写真に写る鹿野君は笑顔。普通の、どこにでもいる男の子だったのにいじめを受け生活が一変、そして自殺をしてしまう・・・辛かっただろうと思います。
鹿野君が思っているよりも義父は彼のことを思っていて、いじめの実行犯である牛尾を事故死させてしまうのですが、死後になって義父の気持ちを知るというのは何とも皮肉なことです。生きている時に知っていればなあ・・・
それにしても、牛尾は死んでも最悪の人間ですね。死んだところで改心する訳が無いと思いますが。此岸で牛尾は直接の罪には問われませんでしたが、死後地獄行きとなりきちんと裁かれ、ほっとしました。あんなので天国行くのなんて、許せませんよ。

・第2条「命にかえても」
死者:上杉涼子 23歳の女性 働いていた工場で前科持ちの自分を救ってくれた社長を庇い、事故死
どういったいきさつで涼子が前科持ちになったのかは完全に明らかになっていませんが、「猫をいじめている子どもを止めようとして」そうなった様なので、心根は優しい方なのだろうと思います。
前科持ちでどこも雇ってくれなかった涼子を救ってくれた社長を、本当に心の底から慕っていた訳で、彼を救うためにとっさに身代わりになったのだろうけれど「自分の身を挺してまで他人を救って良かったのか」とも悩んでいる。助けた方も、一方で助けられた方も罪の意識にさいなまれることがあるというシ村の言葉、なるほどと思ってしまいました。
正直、最後のオチは衝撃的でした。涼子が慕っていた社長は訳ありの人間ばかり雇って低賃金重労働、保険も入れずに私腹を肥やす守銭奴・・・いわゆるブラック企業で、事故は社長を殺すために仕組まれたことだった。ある意味涼子はそういう黒いことを知らずに死ねて良かったのかもしれない。

・第3条「あしたのわたし①」第4条「あしたのわたし②」
死者:小野田凛 5歳の幼稚園児の少女 母親から虐待を受け死亡
ここ数年幼い子供の虐待死のニュースがよく報道されますが、このお話の様なケースは現実にたくさんあると思うと嫌な気分になります。
親は生まれてくる子供を選べない様に、子供だって親を選べない。ひどい母親の元で育てられた凛ちゃんは本当に不幸としか言えないです。幼稚園の先生は熱心に凛ちゃんのことを見てくれて、この先生の子供として生まれていれば良かったのにと思ってしまう気持ちもあります。
ひどい仕打ちを受けても凛ちゃん自身は母親のことを愛していて、それがまた辛い。どんな母親でも、大好きなんだろうな・・・。そしてこのことをズバッと一刀両断するシ村さんの「愛じゃなくてただの洗脳」という言葉。心に重く響きました。

・第5条「働きたくない」
死者:江越伸行 26歳の男性 死刑囚に憧れ5人の小学生を殺害、後に死刑
第1条で登場する牛尾も屑だと思いますが、この死刑囚、江越は同じ位、いや、より屑だと感じます。
雑誌で紹介されていた働かない死刑囚の生活に憧れ、どうせやるなら未来のある子供をということで通学中の子供を車でひき殺す・・・何でそんなことするの?と本気で言いたくなる。しかも、それを武勇伝の様に語る。人間の皮を被った悪魔ですよ。
ただ、実際にこういう事件は起こっているんですよねえ。恐ろしいです。私自身、人の良心を信じたい気持ちはあるのですが、こういう江越の様な根っからの悪に対してはどうしようもないと思ってしまい、いまいち対応策もわからないです。

2巻
・第6条「腐ったアヒル①」第7条「腐ったアヒル②」
死者:塙保 事故により視覚障害を負った漫画家の青年 崖から転落し、事故死 世間的には自殺として処理されてしまう
20年もかけて漫画家になった末に、コミックは作画担当した漫画「腐ったアヒル」のみしか出ていない状態で事故によって視覚障害となり、その後転落死。神様はどれだけ彼に試練を与えるんだと思ってしまう。
世間的には失明を苦に自殺、と思われてしまっている様ですが、塙さん自身は失明したって今度はストーリーを考える側になろうと希望を掴もうとしていて、決して死のうとは思っていなかったんですよね。逆境にあっても登ろうとする・・・強い気持ちがあったのだと思います。
彼の気持ちを唯一わかっていたのが1回も会うことが無かった「腐ったアヒル」のストーリー担当だった戸川アランだったというのが、またじんわりと来るものがあります。2人は「腐ったアヒル」という話を一緒に作ることで、どこか心を通い合わせていたんでしょうね。

・第8条「男やもめ」
死者:襟川 人付き合いの上手かった妻に先立たれた老人 心筋梗塞により自宅にて孤独死
「男やもめに蛆が湧き、女やもめに花が咲く」ということわざそのままの死に方をしたといっても過言ではない襟川さん。亡くなった奥さんの代わりに奥さんの友人とお付き合いをする・・・ということで良い話だなあと思いきや、実は襟川さんは嫌われていた(もしくは仲良く思われてなかった)ために死んでも蛆が湧くまで誰にも気付かれずに孤独死というオチが待っていました。うぞうぞっていう蛆の音がちょっと気持ち悪い。
襟川さんも悪い人じゃないんです。が、ちょっと口が過ぎる上に短気。言っちゃあ悪いけれどいつも一言多いなあと読みながら思ってしまいましたよ。
人と人との繋がりは大事だと思いますが、仲良くもないのにただ繋がっているだけっていうのは本当の「繋がり」と言えるのかなと考えさせられました。まあ、襟川さん自身は満足して死ねたみたいなのでそれはそれで幸せなのかもしれませんね。

・第9条「石間徳治」
シ役所職員、イシ間にスポットを当てた話。イシ間が死刑となったいきさつが判明する。
強面だけれど人情に厚いイシ間さんの過去話の回です。姪のミチを強姦した少年を怒りに任せて殺害、結果死刑ということで、「殺しては駄目だけれど、これはイシ間さんもミチも可哀想だ」と思わざるを得ないものでした。少年達も死後シ役所に行ったんだろうけれど、その後は生前の悪行で地獄行きになったかもしれませんね。イシ間さんもミチも運が悪かった。
強姦を受けて心の傷を負った女性が現在でもおりますが、ミチもその1人。「殺して」という彼女の台詞は重い。
その後結婚して良い家族にも恵まれ天寿を全うし、本当に良かったです。

・第10条「初デート」
死者:伊達夏加 15歳の中学3年生の少女 思いを寄せる少年との初デート中にトラックに突っ込まれ事故死
交通事故は遺体もぐしゃぐしゃになって現場はひどいものだと、以前通っていた自動車教習所の教官に教えられました。
転校する前の思い出に、片思いの男子とデート途中で事故死。可哀想過ぎだよ。
そして衝撃的だったのがシ村さんの言葉。好きな人の目の前で死んで相手の記憶にさぞかし焼き付いた・・・ヤンデレっぽい発想だと思いました。シ村さんは、生前好き過ぎて人を殺したとかそういう過去があるのでしょうか。夏加にひっぱたかれた後の表情の変化と、回想のシーンが気になる。

〈まとめの感想〉
生死に関わる漫画や小説の中には「感動もの」としてプッシュされているものもありますが、この漫画に関してはそういった単なる感動ものの漫画だとは思えません。確かに感動話もありますが、同時に後味の悪い、ブラックな話もたくさんあるのが特徴でしょうか。

舞台は死後の世界にあるシ役所。訪れるのは死者ばかりで死因によって課が分かれている・・・個人的に星新一のショートショートにありそうだなんて思ってしまいました。
そして物語に頻繁に登場するシ役所職員達。シ村にニシ川・・・職員には皆「シ」という字が名前に含まれています。
作中では「死役所」ではなく「シ役所」と表記されますが、シ=死ということだとは薄々感じますね。

このシ役所に訪れる死者は皆死んだ時の格好をしているんです。自殺して足がぐにゃぐにゃになっていたり、交通事故で血まみれの上に内臓も骨もむき出しになっていたり、見様によっては「グロい」と思われる方もいそう。老衰の人はそういった外傷が無いみたいで、読みながら「一番綺麗に死ねる方法って老衰なんだろうな・・・」としみじみ感じてしまった。

大体1、2話で物語が完結しており、大抵の流れとしては死者がシ役所に手続きに訪れる→死ぬまでの死者の人生を振り返る→最後の1ページは死者の人生を切り取ったかのようなたくさんの写真で埋め尽くされるといった感じです。
この写真で埋められた最後の1ページにそれぞれの人生が凝縮されている様で、複雑であり、不思議な気分にされます。

老若男女色々な死者が登場しますが、1、2巻の時点では若者の死者が多い感じです。自殺だったり事故死だったり虐待死だったり。1巻の虐待死の凛ちゃん、2巻のデート中の事故死の夏加ちゃんの話はまだ幼いからこそ切なく感じます。凛ちゃんがあの母親じゃなくて先生の元に生まれていたらどんなに良かっただろうと思うと・・・辛くなる。

話を読んでいて至る所で感じたのがすれ違い。
1巻に登場する自殺した鹿野君は思っている以上にお義父さんが彼のことを大切に思っていたことを死後になって知りましたし、事故死の涼子は工場の社長のことを慕っていたけれど裏では黒い話があったり。2巻では漫画家の塙さんは事故だったのに自殺として現実では処理され、男やもめの襟川さんは実は周囲から疎まれていた・・・。こういう「すれ違い」が随所にあって、それがまた黒い雰囲気を作中内に漂わせているのかもしれません。

個人的に許せないのは1巻に登場する鹿野君をいじめた牛尾、そして死刑になった江越。両者もそれ相応の報いを受けた様ですが、やったことは消え去りません。いじめに殺人を実行してしまう、まさしく屑。死後も反省している様子が無いのが腹立たしいのです。天誅が下るのも当たり前だと思います。

話が進むにつれてシ役所の職員は全員死刑になった者であるということが判明し、かなり衝撃を受けました。シ村さんも、ほくろが素敵なニシ川さんも何らかの罪で死刑になったなんて信じられない。
イシ間さんの過去が明らかになったので、追々シ村さん始め他の職員の過去も描かれるだろうと思いますがやはり気になるのは本作の主人公的ポジションにいるシ村さん。

シ村さんはVの字の様な笑顔が特徴であり、常にその顔でいるからこそ怖い。仕事熱心なんですが、時に妙な発言をするので本当に、どういう人間なのかわからないキャラです。優しいのか優しくないのか・・・いや優しくないのかな?やっぱりわからない。
人殺しをしたことを武勇伝の様に語る江越に「屑」と発言したところから見て、むやみに人を傷つけることは許さない気持ちは持っていると思える。その一方で2巻の事故死した夏加ちゃんに対して、「好きな人の目の前で死んで一生その人の忘れられない思い出になる」といった内容の話をして、そこからちょっと感覚がずれている印象も受ける。その後、生前のシ村らしき人物が女性を殺した直後の様なシーンが登場しますが、行き過ぎた愛情からシ村を殺人に走らせてしまった風に想像してしまうのです。この予想は当たっているかな・・・
シ村さんはこの漫画の見所といっても過言ではない。

〈その他〉
・シ村さんの営業スマイル?Vの字の笑顔は怖い。
・死んだ時そのままの姿でシ役所を訪れる死者達。結構グロテスクです。
・ブラックな話多め。
・シ村さんの過去も気になりますが、他の職員の方のそれも気になる。ニシ川さんは何で死刑になったの?岩シ水君とハヤシ君辺りは、死刑になりそうに見えないのですが・・・
・第5条のラストのシ村さんの台詞「頼みますよ法務大臣」が地味にじわじわくる。シュールです。日本で死刑が無くなったら、シ役所に新しい職員入ってこなくなるんじゃないですかね。
・いじめ自殺にブラック企業、虐待に無差別殺人、孤独死と、意外に現代の社会問題が取り上げられています。
・全体的に暗い。むやみやたらに美談にしてお涙ちょうだいの感動話にしていないのが良いです。

死役所はpixivコミックで試し読みできます。
http://comic.pixiv.net/works/746
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2017.03.21 Tue 00:50
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