「なないろ革命」1巻 柚原 瑞香 

「なないろ革命」1巻 柚原 瑞香 の感想です。

先日森ゆきえさんの「めだかの学校」が再連載すると聞き久しぶりにりぼんを購入した際、出会った漫画です。
中学生の少女達の友達関係について描かれています。

なないろ革命 1 (りぼんマスコットコミックス)なないろ革命 1 (りぼんマスコットコミックス)
(2014/12/15)
柚原 瑞香

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〈最初に一言〉
友達って難しい。中学生女子達にとって、教室は戦場です。


〈あらすじ〉
奈菜は小学校からの友達であるゆゆの「お願い」を断ることができない。髪形もお揃いにしようと言われたら一緒にしてしまうし、本当はピンク色が好きだけれどゆゆがピンクが良いといったら譲ってしまう。ゆゆと一緒にいると私が減っていくと感じた奈菜。今の自分を変えたくて、奈菜はゆゆに「お願いはもうきけない」と小さな革命を起こすが・・・!

〈登場人物〉
・栗山 奈菜
主人公。中学1年生の少女。自分を出すことが苦手な性格で、つい人にばかり合わせてしまう。小学校からの友達、ゆゆとは同じクラス。ゆゆに頼みごとをされると断ることができず、自分を変えるためにも小さな革命を起こす。

・小嶋 ゆゆ
奈菜の友達。同じく中学1年。奈菜とは正反対に自分の見せ方が上手で、いつも人気者な美少女。他の友達と比べて奈菜には特別な感情を抱いている。クマが大好き。

・梓、ちほみ
2人とも奈菜・ゆゆと同じクラス。奈菜、ゆゆと一緒に4人で行動することが多い。お団子頭なのが梓、ショートカットなのがちほみ。奈菜の革命を見て一旦は奈菜の味方となるが、ある時からゆゆ側について奈菜を攻撃するようになる。

・詩丘
奈菜達のクラスメイトである男子。学校をさぼり気味。一見怖いように見えて優しく、クラスの中でも割と人気者。自分をしっかり持っており、奈菜の憧れ。いじめられる奈菜を助けることもあり、自分を変えようとする奈菜のことを見守る。学校の屋上がお気に入りの居場所らしい。

〈感想〉
ここ最近はりぼんでも、なかよしでも、ちゃおでもいじめをテーマにした漫画が多いと思います。それだけ、いじめに悩む子もたくさんいて、またいじめが問題視されているのでしょう。
この漫画に登場する奈菜、ゆゆ、梓やちほみ達、その他クラスメイトの中で起こる数々の問題は、いじめだと目に見えるものもあれば、「友達だから」と見過ごされてしまう様ないじめもあります。
私はいじめを受けた本人が嫌に感じたり、いじめだと認識していたりするならばそれはいじめなのだと思いますが、一方いじめ行為をした相手側は「いじめだと思っていなかった」「からかっていただけだった」といった風にいじめじゃないと思っている場合もありますよね。

感想を書いてみましたら長くなってしまったので、以下いくつかの項に分けて書いています。
どうぞ!

・自分を引っ込めてしまいがちな奈菜の物語。小中学生だけではなく、大人も共感してしまうかも!?

奈菜ちゃんとゆゆちゃんは仲良しのお友達・・・なはずなのですが、段々とゆゆが奈菜を支配している雰囲気になっているのも事実。
ゆゆ曰く「奈菜ちゃんはゆゆのお願い何でもきいてくれる」とのことで、奈菜も自分を押し殺しながらゆゆのお願いをずっと聞き続けていました。

「そんなの、奈菜がゆゆにちゃんと嫌なことは嫌って言わないから悪いんだよ」という方もいるかもしれません。もちろん、そのういった部分は奈菜の悪い部分だったと、私自身感じるところもあります。

けれども、仲良い友達であり、ちょっと強引な性格であり、可愛くてみんなの人気者であるゆゆに対して、自分を出すのが苦手な奈菜が「嫌」って気軽に言えるのでしょうか?

きちんと物事をはっきり言える人や、強い人なら言えると思いますが、奈菜の場合はその一言を言うだけでもかなりの勇気が必要だと思います。
奈菜は第1話でようやく「ゆゆのお願いはきけない」とゆゆに対する小さな革命を起こしますが、これも相当の勇気が必要であり、そこに行くまで葛藤がたくさんあったでしょう。
しかも、ゆゆは奈菜にとって最も親しい友達なのです。自分をひっこめて他人に合わせがちな奈菜にとって、初めて特別扱い(親友と言ってもいいかもしれません)してくれる友達がこのゆゆだった訳ですから、ゆゆと相反する様な判断は取り辛かっただろうと思います。

私自身、この漫画の奈菜に似ている性格で、ついつい人に合わせてしまうのです。
ゆゆのお願いを奈菜が断れないみたいに、頼まれると断われない!自分を出せない!
自分でも、損な性格だなあと思いますよ。
ただ全ての人にそうだという訳でも無くて、対等に接することのできる様な関係を築けていることもあります。そういう関係にある友達がいると、やっぱり落ち着きますし、良かったなと感じます。

1人1人それぞれ性格が違いますから、全ての人に対してきちんと物が言える関係であり続けるというのは難しいのではないかと正直思うのです。自分の意見が言える言えないの性格を置いておいても、自分より立場が上だから言えないとか、性格的に怒りっぽい性格、支配したがる性格だから言いにくいとか、お互いの相性によっても自分の出しやすさと言うのは変わってくるのではないでしょうか。
(けれども、きちんと自分を出していく努力が必要ではないということではありません。自分を引っ込めてばかりだと息が詰まるし、ストレスも溜まると思いますので。相手を見ながら、どういう感じで関係を築こうかとか、それぞれ考え変えていくことも必要なのかと思っております。)

奈菜もゆゆと良い人間関係を気付けるようになれば良いのですが・・・奈菜が自分にたてつかないことをゆゆ自身わかっているみたいなので、ゆゆとの関係をすっぱり切って新しい心から信頼できる友達を見つけても良いのかもしれません。

・奈菜は本当の友達を見つけられるのか?そして気になる存在、詩丘。

この奈菜の本当の友達作りという面に関して、詩丘は奈菜にとっての本当の友達になれるのではないかとひそかに期待を寄せています。
ゆゆみたいに奈菜にべったりとか、梓やちほみ達の様に一緒に行動しているとかでは無いのですが、詩丘は奈菜の悩みとか本当の気持ちに気付いているんです。そしていじめられてピンチに陥る奈菜を助けたり、奈菜を女子と男子なので、少女漫画的に恋人関係にのちのちなるのかもしれませんが・・・女子と男子の友情だってありだと思いますし、奈菜自身も何故か本音を言える詩丘は特別な存在だと感じ始めているので、2人が良い友情関係を結べると良いなあと思います。

・あざとくて怖い、奈菜の親友ゆゆ。ゆゆが好きなのは・・・やっぱり奈菜?

奈菜がこれからどうなっていくのか、そして詩丘とはどういう関係になるのか等色々気になる点がありますが、もう1つ気がかりなのが奈菜の親友のゆゆです。

1巻で特に気になるのが、ゆゆの
「ゆゆね 大事な人にとって一番心を動かす人になりたいんだ それが“うれしい”でも“苦しい”でも」
という台詞。

この台詞が登場したのはゆゆが詩丘のことが好きだとクラスの女子に言って、皆でゆゆの恋を応援しようという雰囲気になっているお話。この台詞自体梓とゆゆが詩丘関連のことで話している時に出てきたので、一見大事な人=詩丘のことだとも思えますが・・・。

ゆゆが詩丘が好きだと言ったのは、おそらく奈菜の中で詩丘が特別な存在になっていると気付いたからなのだろうと思えます。
そしてこの台詞の
大事な人というのは奈菜のことではないでしょうか。

ゆゆによって、奈菜の気持ちが動かされているのを感じるのが、ゆゆにとっては嬉しいんだろうなあ。
若干ヤンデレ気質だと思う。

このゆゆっていうキャラクターはなかなか恐ろしい。
自分を見せるのが上手。
他人を思い通りに誘導する。
いつも人気者で周囲の人を味方にするのが上手い。

「ゆゆのお願いはきかない」と革命を起こした奈菜が悪くて、ゆゆがそれを許した“良い子”みたいな雰囲気に持って行き、おそらくわざとラインのグループ内で詩丘君が気になるといった意味の発言をして、クラスの女子の多くを「詩丘君に恋するゆゆちゃんを、皆で応援しよう」といった感じに誘導する。梓とちほみを自分の見方にして奈菜を攻撃する。

こうやって書くと凄く悪い子みたいに思えますが、ゆゆはそつなく笑顔で、良い子のふりをしながらやってのけるので怖いのです。
数年前マインドコントロールが話題になりましたが、それに近いことをゆゆはやっているのかも。ゆゆ・・・恐ろしい子!

・作中で描かれる人間関係の難しさ

何歳になっても人間関係って悩みの種です。
奈菜もその悩みを抱え、そしてそれに立ち向かっていこうとしていますが教室と言う場所の中で起こる色々なトラブルや友達関係のもやもやが漫画の中でも描かれていて、「ああ・・・こういうことあるよねえ」と私も所々共感してしまうのでした。

クラス内で感じられるスクールカーストとか、言いたいことが言い出せない友情関係とか。

ゆゆみたいな自分を見せるのが上手で可愛い子がスクールカーストの上位にいるっていうのは何となくわかります。

ゆゆがあそこまでクラス内で絶対的権力を握れるのは、そういった要素を持ち合わせているだろうからだと思いますよ。
美人とブス・・・あるいはイケメンとブサイクの扱いの違いがネタにされることがありますが、ゆゆが仮に可愛い見た目でなかったら、こんなにまでクラスの皆に愛されて何でも許されるような雰囲気に持って行くことは難しいのではないか?と思います。性格で人気者になっていることもあるとは思いますが、クラス内で「可愛い、可愛い」と言われている辺り、ゆゆの可愛さが権力に繋がっているのも否定はできない。

綿矢りささんの「亜美ちゃんは美人」という小説では主人公(さかきちゃん)と美人な親友(亜美ちゃん)が登場するのですが、その親友は美人が故にクラス内では別格の地位を築き、美人なことが圧倒的権力となっている様な描写があるんです。
「かわいいは権力。ださいは死刑」という言葉でスクールカーストのことや、容姿が良いことの影響力が言い表されておりました。

「なないろ革命」においての亜美ちゃん的立場にいるのが、正しくゆゆちゃんなのだと思いますね。
この子が発言すること、行動すること、何でもクラス内では正しいことになってしまいそうで怖い。
クラス内で圧倒的権力を持つゆゆに立ち向かうことは、結構大変だと思いますよ。頑張れ、奈菜ちゃん!と思わず応援したくなります。

またスクールカースト以外で気になったのが、近年話題のラインいじめ。
奈菜のクラスでもラインのグループがあって、グループ人数30人というのを見ると、大方のクラスメイトがラインで繋がっているのだと思います。(詩丘君は入っていない様ですが・・・)
そこで「ゆゆちゃんの恋を応援しよう」協定が結ばれたり、奈菜と詩丘が一緒にいる所を隠し撮りした画像がアップされて公開処刑されたりと、現実世界から離れたネット上でもクラスの人間関係に縛られ、本当に面倒だなと一読者として思ってしまいます。
奈菜は詩丘が好きなゆゆを裏切った“裏切り者”となり、弁明するも既読無視。
早く誤解を解かなくちゃという一心で、奈菜がメッセージを送る場面がありますが、ハイスピードでいじめが進んで行くのがまた恐ろしいです。
私がリアル中学生の時はラインなんてありませんでしたから、こういう経験はありませんが、現実にこうやっていじめに合っている子は本当に大変だと思います。私がその立場にいたら、ストレスで携帯電話を壁に投げつけて壊しそう。

〈その他感想等〉
・少女漫画ということで想定されている読者は小中学生の女の子なのかもしれませんが、大人でも共感できる様な人間関係の難しさが描かれていると思います。
今現在悩んでいる小中学生の子達にも、大人にもおすすめしたい漫画です。

・私自身嫌なことを嫌と言えない、友達の頼まれごとをついつい引き受けてしまう性格なので、奈菜のことは他人事と思えません。
ゆゆの様にクラス内の人気者だったことなんてさらさらありませんので、ゆゆみたいな人気者に雰囲気を持って行かれることや、影響力のある子の意見ばっかり重用されて、何で自分の言っていることは耳傾けてもらえないんだろう・・・と不満に思ったこと、たくさんありました。
人間って平等じゃないよ。やっぱりどこか不公平だよ。そんな風に今でも思います。

・ゆゆが時折見せる、本性が見えた様な顔が怖い。いらっとしていたり、何か企んでいたり。

・よく考えると自分たちを正当化したいがために奈菜を悪者にする梓やちほみもなかなか性悪な気がします。ゆゆに先導されていることから、しょせん彼女らも長いものに巻かれろ精神なのかもしれませんが。

・きちんと自分を持つ詩丘は、有名ないじめ漫画「ライフ」でいう羽鳥未来のポジションにいるのかな。主人公の憧れであり、時々助けてくれるヒーロー。ちゃんと主人公に喝入れることもできますし。

・なないろ革命はこちらで試し読みできます。
http://www.s-manga.net/book/978-4-08-867352-3.html

 また感想の途中で登場した綿矢りささんの「亜美ちゃんは美人」は「かわいそうだね?」に収録されています。

かわいそうだね?かわいそうだね?
(2011/10/28)
綿矢 りさ

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 「亜美ちゃんは美人」自体はこちらで試し読みもできるみたいです。
http://www.bunshun.co.jp/mag/bungakukai/bungakukai1107.htm

普段表だって言えないけれどこういうことあるよね、と思うことを「亜美ちゃんは美人」内で描かれているので、こちらもまたおすすめです。
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