「余命¥20,000,000」1巻 草野 佑 

「余命¥20,000,000」1巻 草野 佑 の感想です。

余命二千万円。はてさて、そのタイトルの意味とは?

余命¥20,000,000-(1) (KCx(ITAN))余命¥20,000,000-(1) (KCx(ITAN))
(2013/12/06)
草野 佑

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〈最初に一言〉
お金が尽きるまで・・・ゆっくり消滅していきたいんだ。人に会わない、働かない、外界とできるだけ関わらない。お金が無くなれば、それまで。ただそれだけ・・・こういう暮らしってありなのか??


〈あらすじ〉
転職活動に連敗で傷心の宇奈月。母からの頼みで、叔母の家を借りている女性・草間さんの様子を見に行くこととなった。人に会わない、働かない。お金が尽きるまでゆっくりと消滅していきたいという仰天の生活を送る草間さん。ついにお金が0になるかと思いきや・・・くじで二千万円を当ててしまい、その日から草間さんの余命二千万円な生活が始まるのであった。

〈登場人物〉
・宇奈月(うなづき)
仕事が上手くいかず会社を辞めてしまい、その後の転職活動も上手くいっていない25歳。男。(1巻の時点では無事再就職は果たす。)ちょくちょく草間さんの様子を見に行くが、その暮らしぶりに驚かされたり憧れたり・・・。
真面目で悩みやすい性格。

・草間(くさま)
宇奈月の叔母の家を借りて暮らす引きこもりの女性。身長は140cmと小柄で、年齢・出自共に不詳の謎多き人物。毛玉の様な髪が特徴的。(たまに髪の間からちらっと瞳が見えたりもする。)対人恐怖症なためできるだけ社会と関わらない様に生きており、人にも会わず、働かず、持ち金が尽きるまでゆっくりと消滅していきたいという暮らしを送る。

〈感想〉

・社会にしがみついて生きる宇奈月君と、社会から離れた自己完結の世界に生きる草間さん。2人それぞれの生き方・・・どっちが良い?

草間さんにとって、余命は所持金額。くじで二千万円が当たったため現時点では余命=二千万円であり、それを段々と消費していく日々です。

自宅から出ないで庭の草むしりをしたり自分の毛づくろいをしたり・・・お金が無ければ食事もとらないし、お茶じゃなくて水で良い。社会とも人ともほとんど関わらずに生きているため全てが自宅で完結しています。

必死にもがいて、どうにか社会にしがみついて生きていこうとする宇奈月君。
一方社会から離れて悠々自適な生活を送り、「自分はもういいんだ」とゆっくり消滅していくのが希望の草間さん。

この2人の生き方が何とも、対照的です。


・宇奈月君と草間さん。どちらにも共感してしまう。

個人的に就職に失敗し続ける宇奈月君と、自宅でひっそりとくらす草間さんの両方の面を持った生活を、今現在自分自身が送っているのでどちらの生き方にも共感する部分があります。

「一回落ちて何もしなかったら落ちていく一方」「どうにか社会にしがみつかないといけない」と思ってしまう宇奈月君の心境には激しく同感してしまいました。働いていないことで世間に負い目を感じたりねえ・・・。就活駄目な度に自分は必要とされないんだと感じたり・・・。
結局宇奈月君はどうにか再就職を果たしますが、働いてからも人間関係や慣れない職場関係で悩んだりと、大変そうです。他の方よりも少々思い詰めやすい性格なのかもしれません。ただ、外の世界で関わりがあることで得る喜びや発見もあって、それらが段々と宇奈月君を成長させている様子です。

宇奈月君が完全自己完結な草間さんの生活を羨ましがることももちろんありますが、未来が見えず恐怖もある外の世界も悪いことばかりではないということを読者に身を持って教えてくれているかのようです。
草間さんの様な暮らしが悪いと全て否定してはいない。そういう草間さんみたいな自由な生き方も良いけれど、社会と関わる生き方も悪くは無いよね!っという感じ。

さてさて、お次は草間さんの暮らしについて語りますよ。

正に「晴耕雨読」の言葉の如く、自由に暮らす草間さん。
1日かけて毛づくろいをしたり草むしりをしたり家にペンキを塗ったり、何とも贅沢な時間の使い方をしています。
宇奈月君が草間さんの生活を「バランスドアクアリウム」と例える様に、完全に外の社会と隔絶された自己完結な暮らしです。
この生活自体も羨ましいと思ってしまうものがありますが、良いなと思うのが草間さんの思考です。


・「まあいいか」と考えられる草間さん的思考への憧れ。

思い詰めやすい宇奈月君とは違い、草間さんは「まあいいか」と思える人。
お金が少なくても「大丈夫大丈夫」。お風呂も薪で沸かせばいいや。超対人恐怖症だから内職でお金を稼ぐ。外に関わりたくないならばできるだけ外と関わらず、あくまでもマイペースを大事に。

何かが駄目になったり行き詰まると、「ああもう駄目だ!終わりだ!」と感じてしまうことは現代よくあることだと思います。
ところが草間さんの場合は、終わりでない。○○が駄目なら駄目でいいじゃん。まあいいか。違う方法でどうにかしよう・・・。おそらくそんな風に考えられる、なかなかタフな人なのではないかと思う。

こういう部分に宇奈月君も教えられるものがあって、「こういう思考で生きている人もいるんだ」と知ることで思い詰めた気持ちから解放される。気持ちが軽くなるとでもいうのでしょうか。

ちょっとやそっとでは動じず、柔軟性があって、そういう草間さん的思考が私にも欲しいなあと感じてしまうのです。どちらかというと心配性で悩みやすい宇奈月君タイプの思考回路なので、草間さんの様に「まあいいか」と思える頭が欲しい。


・結局・・・草間さんは何物?

それにしても草間さんはかなり謎な人物です。
見た目は小柄で、少女の様。けれども言葉の端々に達観したところがあり、宇奈月よりも一枚も二枚も上手な印象です。
下手にひねくれている訳でも無く、「何もしなかったら落ちていく一方」と暮らしぶりを心配する宇奈月に「ありがとう」と素直に感謝の言葉を伝えたりと、自分に対する意見もしっかり受け止めている部分もあって子供ではないだろうなあとは思います。(こういうきちんとありがとうとか言える、礼儀正しいところが草間さんの魅力だと感じる。)

何故消滅したいという考えに至ったのか。
何故対人恐怖症になったのか。
他にも草間さんに対する気になることがたくさんあります。謎多き女です。
これから巻を重ねるうちに、草間さん情報が小出しにでも解禁されると嬉しいですね。


〈その他の感想〉
・草間さんにも、宇奈月君にも共感する部分、共通する部分がたくさんあります。就活失敗ばかり、悩みやすい性格。どうにか社会と繋がっていなければと考える部分は宇奈月君似。自宅にて、社会と離れ内職とかしながら日々割と自由に暮らすっていうのが草間さん似。どっちが良いとも悪いとも言えない。
・ほとんどトーンを使わない、書き込みの細かい絵が凄い。
・絵柄は可愛らしいですが、宇奈月君の上手くいかなさとか現実的な部分が所々登場して、心にずしっと来るものがあります。宇奈月君の心情とか・・・もう・・・宇奈月君、思い詰めるな・・・休め・・・休め・・・と思ってしまう。
・宇奈月君にとっての心のオアシスは草間さんなのかもしれない。違う価値観に触れるというのは、自分の考えの殻を破ってくれる良いきっかけになるのではないでしょうか。
・pixivコミックでLife.1から3まで(第1話から3話まで)試し読みできます。
http://comic.pixiv.net/works/583
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