「ハケンの麻生さん」1巻 仲川 麻子 

「ハケンの麻生さん」1巻 仲川 麻子 の感想です。

haken no asousan
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%8F%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%81%AE%E9%BA%BB%E7%94%9F%E3%81%95%E3%82%93-%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0-KC-%E4%BB%B2%E5%B7%9D-%E9%BA%BB%E5%AD%90/dp/4063884821/ref=tmm_other_meta_binding_title_0?ie=UTF8&qid=1440210860&sr=8-1


派遣社員としてデザイン会社で働く女性、麻生さんが主人公。
物腰柔らか、仕事にも真面目に日々取り組む彼女には秘密があった・・・それは 虫好き ということ。

会社の机の中の引き出しでこっそり虫を飼い、休日には虫の採集のため山に行く。正に現代の虫愛づる姫君。

当初は虫オタクなことも、会社で虫を飼っていることも秘密にしていたみたいですが、それも1話の時点で職場内にばれてしまっています。麻生さん自体は虫を教室で飼っていた学生時代浮き気味だった過去があり、ばれてしまった一瞬その記憶がよみがえりますが・・・職場での反応は意外や意外、思ったより優しいものでした。

昔だったら「気持ち悪い」と言われていた虫への愛情も、職場ではその飼育の手の込みように「凄い」の反応。虫の飼育も職場公認となり・・・職場の、自分の机の上で虫を飼育する麻生さんは何だか堂々と見える。

さてさて、主人公の麻生さんは虫オタクな訳ですが、世の中には色々な趣味をお持ちの方がおりますよね。

漫画好きだったり、ドール好きだったり・・・あ、これ全部私の趣味です(笑)

では質問。○○オタクなそこのあなた・・・あなたは自分の趣味を周りにさらけ出せますか?

これは、人それぞれでしょうねえ。私の場合は自分と相当気の合う方でなければできる限り、秘密にします。

やっぱり、周りに受け入れられないんじゃないかとか、からかわれる原因になるんじゃないかとか、嫌われるとか、気持ち悪がられるとか暗いとか思われるんじゃとか・・・色々考えてしまうんですよねえ。
「私はこれが好き!何で自分の好きなものを恥ずかしがる必要があるの?おかしいじゃない?周りがどう思ったっていいじゃない?ね、そうでしょ!?」と、自分をしっかり持っている人なら言うかもしれません。私もそれには同意。好きでいることは罪じゃないし、周りに何を言われようと関係ないのですから!・・・いや、でも堂々と公表して自分をさらけ出すのはなかなか勇気が要る。そうして結局秘密主義に至るのです。

主人公の麻生さんの場合は、虫好きを気持ち悪がられたこともあって秘密にしている・・・そして虫好きなことだけではなく自分自身を出すことも、他人を知ることもどちらかというと拒否している。

1話にて、同じく派遣社員の小渕さんと「派遣社員は社内行事とか出なくて気楽」「オフの顔とか知りたくないからそういうの苦手」といったやりとりをしていますが、自分の普段とは別の顔=虫好きな一面、を他人に知られたくないからこそ、他人のオフの顔も知りたくないんじゃないかな、とも感じました。自分を知られたくないという気持ちが裏返すような言葉で表面に出てきているかのごとく。

自分を閉ざし、周りのことも必要以上に入り込みたくはない。それを貫いてきたはずなのに、思いがけず職場で虫好きなことがばれてしまい流れ的に本来の自分を知られてしまったけれど・・・案外簡単に受け入れられて悪くは無かった。そんな気持ちが1話最後の麻生さんの台詞「ふむ 悪くないな」に込められているんだろうな。どうでしょう。

職場バレして以降の麻生さんは、同じ虫好きの常務とオフの日に虫採集に行ったり、虫の知識を他の人に教えてあげたり、割とオープンなんですよね。もう虫好きキャラが板についたかのよう。麻生さん=虫という認識に周囲もなりつつあり、それをからかいの対象ではなく周りも麻生さんのキャラ・個性として捉える様になっているのが面白いです。

こういう風に、寛容な環境に身を置けるのは羨ましいものです。
自分が受け入れられているか、いないかでは居心地とか大きく違うはず。

ここで、「寛容な」という言葉が出てきましたが・・・
一通り、この「ハケンの麻生さん」を読んで思い浮かんだ言葉、まず1つ目は「寛容」

趣味だったり、その人の個性とか持っているものがからかいのネタになったり、馬鹿にされたりする例はあちこちにあって、麻生さんのように受け入れられる訳ではないと思います。あとは、からかわれたりされなくても無関心だったり、変わった人認定されたりさ・・・

自分が正しい(もしくは普通)だと思い込んでちょっと違う人は「悪い」とか「変わっている」と認識して、否定してしまうのって物凄く乱暴で自分勝手ですよね・・・。ただ、そうやって個人の中に他者を受け入れられない気持ちが生まれてしまうのは仕方のないことである気もするのです。

1巻の終わりの方の話で登場する車いすの女性が、
「自分が車いすに乗るようになって前は気付かなかったものに気付く様になったけれどそれは視点が広がったのではなく視点が変わっただけ、どうしても人1人が見ることのできる世界はやっぱり限られていてだからこそいろんな人がいた方が良いのかもしれない」
と話しているシーンがあるのですが、これを読んで個人の見ている世界には限りがあるからこそ受け入れられない気持ちも生まれてしまうのではないのかな、と思えました。

寛容な気持ちがあれば、この受け入れられない気持ちも和らぐのではないか?他者を受け入れれば心も自然と広くなるんじゃないか?・・・どうでしょう。麻生さんの職場の寛容さには驚かされましたが、もしかしたら、職場で虫好き麻生さんという存在を受け入れたからこそ、寛容な雰囲気になっていったという可能性もあるかもしれませんね。

職場の変化、そして麻生さんの変化。秘密がばれてしまったことが思わぬきっかけとなり、閉鎖的になっていた麻生さんの心が少し開かれてきた、そんな印象も受けるのです。

変化。・・・さてさて、寛容に引き続きこの「ハケンの麻生さん」を読んで思い浮かんだ言葉その2はこの「変化」です。

麻生さんと、その周辺の日常を描いた物語なのですが、一方で秘密が露見した後の職場の変化、そして麻生さん自身の変化もテーマにあるこの一冊。(公式ホームページには“「ハケンの麻生さん」が巻き起こす、素敵な職場レボリューション!”と紹介されています。)

職場の変化、麻生さんを取り巻く周囲の人の変化、そして麻生さん自身の変化・・・色々な変化と言うか「変態(虫とかの形や状態が変わることの意味。虫好き麻生さんにちなんで。)」が詰まっておりました。

1巻があるならば、当然2巻もあるだろう・・・と私、楽しみにしていたのですが・・・

なんと既に連載が終了しているとのこと。

作者の仲川さん公式ブログによると、「打ち切り」だったらしく・・・思わず「えぇー!」と心の中で叫んだ。

虫好き麻生さんの職場でのお話が進んでいく中で、時々はっとする言葉や考え、なるほどなと思わされることがあって(上記の車いすの女性の話とか、1話冒頭の派遣か正社員かは机に置かれた物が物語っているとか・・・)、好きです「ハケンの麻生さん」。既に最終回を迎えてしまっていたことは非常に残念でしたが、読んで良かったなあと思います。

☆「ハケンの麻生さん」は講談社のwebコミックサイト「モアイ」で試し読みができます。

〈読み切り版〉
http://www.moae.jp/comic/hakennoasousan/0/1

〈連載版〉
http://www.moae.jp/comic/hakennoasousan/1?_ga=1.135454135.761167871.1432550098
関連記事
スポンサーサイト

Comment

Add your comment