「箱庭とパピヨン」1巻 紅村 岬 

「箱庭とパピヨン」1巻 紅村 岬 の感想です。

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全体的にアンティークな雰囲気・・・けれども発達した科学技術には近未来を感じる。スチームパンクな香りもする気がしますが・・・

舞台は近隣の国とずっと戦争状態である小国・クライス。
小さいながらも生きながらえているクライスには秘密がありまして、それが、身分制度によって有能な市民を保護する制度。国の戦力になる有能市民を“箱庭”と呼ばれる超強力防護柵で守るのだそう。しかしながらこれには続きがあって・・・有能市民は死んでもクローンとして甦りを繰り返させられるのです。名付けて“甦り計画(クローンプロジェクト)”
防護柵である箱庭はある意味檻の様なもので、そこに閉じ込められ、死んでも生き返り、戦争に有益な技術を提供させられ続けられるというなかなかに気分が悪い計画。

そして、クローンは甦りを繰り返せば繰り返すほど、寿命が減っていく。
前の寿命が18歳だとしたら、次のクローンは17歳と半年、と言った様に。永遠な訳ではないのです。

主人公アリンシアも何度も甦ってきた1人。彼女はロボットの技術者で、国王に次ぐ地位を持つ三大科学者(トレスジニア)。一見可憐な少女といった風ですが、その身体には何世代も積み重ねられてきた歴代アリンシア達の記憶が移植されていて、とてつもなく偉い御人なのでした。

物語はこのアリンシアとロボットのナイト(元々人間でアリンシアの想い人だった。)と、アリンシアの監視役として国から派遣されている女性・ルネを中心に展開されていきます。ちなみに、舞台である小国クライスでは国に有益でないと判断された者や貧困層は甦り計画の対象外で人生は一度きりしかありません。ルネは貧困層出身の女性であり、クローンではないです。

クローンとか、ロボットとか、SFやファンタジーといった物語上のものでは、ここ最近なくなってきていますよね。現実にも、十分あり得る話になって来ていて、そこが少し怖くもあります。まだ人間のクローンはこの世にいない、となっておりますが、優秀な遺伝子の人のクローンとか、偉人のクローンとか、裏の世界ではつくられているとかいないとか・・・信じるか信じないかはあなた次第。
そういえば、素朴な疑問なのですが実際にクローンの寿命はテロメアの関係で短くなるそうですが、アリンシアの寿命が短いのもそれが原因からなのでしょうかね?妙にリアル。

元々アリンシアもナイトも普通の人間だった訳ですが、アリンシアは記憶は引き継ぐが短命なクローンに、ナイトは心を持たないロボットにそれぞれなってしまい、それ故に想いのすれ違いがあって何とももどかしい。あり得ないですが時間が戻るなら・・・ナイトが事故死する前の、普通の人間だった頃の2人に戻してしまいたい。
ナイトへの想いを引き継ぐアリンシアがナイトのために心をつくっても上手くいかなかった場面は、とても苦い。そして結局ナイトに心が芽生えたかと思いきや、今度現れたクローンのアリンシアは心が無く、それまでの彼女とはまるで別人になっていて、どっちかが良くなったかと思ったら片方が悪くなるということを繰り返していて、どうしてこう運命は上手くいかないものなの?と思いました。

そして最後のシーン。
人間でなくなったアリンシアとナイトを救ったものは、“死”だったのかな。
死ぬことでアリンシアはもうクローンで何度も甦ることから解放され、ロボットのナイトも死んでようやくアリンシアと一緒に行ける。
死が2人にとっての救済だった、死んでクローンとロボットという別々の存在になってしまった2人がようやく同じ存在になれたのだ、と個人的に解釈しています。

1巻はアリンシアとナイト、そして2人を見守るルネの物語でした。
正直この一冊で物語が終わるかと思っていたので、「1巻」の表記にかなり驚かされました。
アリンシアとナイトはもう死んでしまったので、2巻以降は一体誰の物語になるのでしょうか?
舞台であるクライスには、アリンシア以外にもクローンになって何度も甦っている人達がいる訳ですから、その人達にスポットが当てられるかもしれませんし、ルネが再登場するかもしれませんし、ルネの様にクローンではない人達が主人公かもしれません。アリンシア以外のトレスジニア達も姿の見えない円卓会議のみですが登場しているので、そちらの登場も可能性が高いのではないでしょうか。科学技術ばかり進んで、厳しい身分制度もあり、倫理観とか人間の尊厳に関しての意識がかなりぶっ壊れている歪んだ世界に思えるので、その辺りがどう描かれていくのか興味あります。

試し読みはこちらです。↓
http://www.comic-zenon.jp/tachiyomi/pc/hakoniwato.html
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