「針子少女」 雨森 ひろこ 

「針子少女」 雨森 ひろこ の感想です。

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部活でのいじめを注意したことから自分が新たないじめの標的になってしまった・・・裁縫と人形作りをこよなく愛する女子高生山根ちや。
そして学校で孤立気味のロリィタ大好き女子高生鹿野小夜子。
そんな彼女達が一緒に、時に苦しみ押し潰されそうになりながらも前を向いて突き進む。そんなお話です。

実を言うと表紙買いで、最初は「ゴシックアンドロリータバイブル」に掲載されていそうな漫画!っというのが第一印象でした。
そして、最後まで読んで作者さんが人形服作家の方だと知り、驚きました。しかも、あの「こぐま座」の雨森さんでしたか。
私自身、人形服作家さん作成のドール服を買ったことが無いのですが、こぐま座さんのお名前はリカちゃんキャッスルとかでもよく見るので知っていました。人形のお洋服も作れて、漫画も描ける。凄い。人形服作家兼漫画家さんという方には初めて出会いました。

ちや、小夜子。それから途中から出てくる黒川くん。
彼らが戦うのはいじめとか、孤独とか。

制服を自分好みにアレンジして着て行ったり、針子部という名の部活をつくって自分達の居場所をつくったり、自分の好きなもの(ちや→裁縫と人形、小夜子→ロリィタ)を心の糧にして前に進もうとしたり・・・とってもちや達は行動的。そして強い。

話の中ではいじめはまだあるし、好きなものを周りから馬鹿にされたり笑われたりして孤立しているところもあり、問題が全て解決しているわけでは無いんです。何回もちやにしろ小夜子にしろ押し潰されそうになっておりますし。自分の世界を持って、周りからの視線とか声なんて弾き飛ばせてしまえる程の強さが常にある訳じゃなくて、弱い部分も持ち合わせている少女達。

読んでいて思ったのは、「逃げないな、この子達」ということ。
私は、いじめから逃げたって良いと思っています。自殺したり、自分を追い込んでしまう位なら学校なんて行かないで逃げた方が良いんだって。
ちやも小夜子も、黒川くんも、逃げるという選択肢だってあったと思います。でも、逃げないで、それぞれが趣味とかロリィタ服とか自分の武器を持って(武装して?)、そして自分の世界を変えようとして、お互いがお互いの心を支えながらいじめとか孤立に立ち向かおうとしていく。弱い部分もありながらも、どうにか武装して強くなって前に進む。ああ、こういういじめへの向き合い方もあるのだな、と感じさせられました。

それから、「おおっ」と思わされたのがちやと小夜子と黒川くんのロリィタ服を着ながらのスィッター(作中ではこの表記ですが、ツィッターみたいなもの)生放送。
外で、街中で、そしてカメラを通して知らない人がたくさん見ている中での生中継。緊張で、弱気になるちや。一番最初に声を発したのはロリィタ少女小夜子。小夜子は「ロリィタは自分の精神安定剤」とか色々と自分の弱い所も含めて告白して、それに続いてちやも何を言っているかわからなくなりながらもいじめへの心の叫びを懸命に発する。
そして黒川くんも2人に続いていじめられていることを告白するのですが、ここで思わぬアクシデント発生。黒川くんをいじめている男子2人が生放送に乱入してくるのです。

「うわ、このタイミングで。最悪!」と思わずにいられなかった私。
私だったら、いじめっ子とか嫌ーな相手を見たら、変な汗が出て、胃の辺りが気持ち悪くなって貧血とか起こしてしまうかもしれない。

黒川くんにいつもの調子でいじめっ子男子2人は乱暴するし、ちやと小夜子を突き飛ばすしで好き放題されるのですが、その後の黒川くんの行動に私は驚かされたのです。

黒川くんが取った行動は・・・カメラに向かっての「いじめっ子とも友達になる」という宣言。

てっきり、私はカメラの前にいじめっ子を突き出して、全世界にいじめっ子の顔を公開するとともにいじめっ子を撃退するとか、いじめっ子に反撃して一発パンチを喰らわせるとか、「僕はいじめに負けない!」と強く叫ぶとか、そうするんじゃないかなと思っていました。

ところが全く予想とは違って・・・友達になるという宣言。

確かに暴力に暴力で応えて、また後でいじめられたらどうしようもないですし、いじめっ子の顔をネットに後悔して撃退しても、鬱憤は晴らせるでしょうけれど黒川くんといじめっ子男子の間には相変わらず嫌な感情があって、お互い円満になる訳じゃないだろうと思います。結局嫌なことをされたから、嫌なことを返して復讐するっていう方法では、お互いのこじれた仲の根本を変えることができないのではないでしょうか。

でも、そう考えても恨みがあると相手をどうにかして叩きのめしたい、不幸にしたい、そういう負の感情の方が大きくなるものだとも思うのです。これはしょうがないことだと感じる。

だから、いじめっ子とも友達になるという宣言は凄い。黒川くんだって暴力受けたりカツアゲされたり犯罪だと捉えられること、いじめっ子にやられているんですよ。復讐したい気持ちだってゼロでは無かったでしょう。でも、友達になると宣言した。嫌な感情を、相手にぶつけない手段を選んだ彼は、人間として凄いと思ってしまいます。

・・・そういえば、ちやも小夜子もいじめっ子とかクラスメイトに復讐したり、自分の恨みをぶつけたりすることをしていないんですよね。
好きなもので自分を武装して、時にはそれに自分の感情をぶつける。いじめを受けて、殴って反撃したりいやがらせをしたりしない。自分の中で負の感情と向き合って消化しようとしているのだと思う。

私はもう学生ではないので、ちや達が戦っている学校でのいじめというものには縁遠くなりましたが、学校でない場所で嫌な思いをしたり、弱い自分と向き合わざるを得ない時はあって、その辺りは学生時代と変わらない。
おそらくこれからもそういう場面にぶち当たることがたくさんあると思うのですが、そういう時にこの物語を思い出したいな、と読んだ後そんな風に思いました。ちやや小夜子達にとって好きなものが心を強くしてくれるように、この物語が私の心の支えになってくるる気がします。

さてさて、この辺りで感想文は終わりとなりますが・・・
この「針子少女」、1巻とかの表記がありませんが巻末の作者である雨森さんのコメントによるとまだまだお話は続くみたいです。1巻の終わりからすると、ちやと黒川くんの縮まる距離に不安がる鹿野さんに何か起こる・・・そんな感じでしょうか、2巻。
ちや、小夜子、黒川くん。それぞれ裁縫とかロリィタ服とか好きなものが当初の心の支えですが、段々とお互いの存在もその1つになっているのだと読んでいく内に思いました。若干小夜子はちやに依存している雰囲気があるので、次のお話がどうなってしまうのかとても気になります。3人の友情関係が崩れてしまわなければいいのですが。危うさがあってとっても心配です。
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